波乱の幕開けとなったM-1グランプリ2021
見取り図、ニューヨークなど決勝常連組、
ラストイヤーであり
久しぶりの出場で注目されてた
アルコ&ピース、ハライチが
準決勝で落選するという結果でした。
決勝戦初出場が5組と手の内がわからないコンビが多く残りました。
例年以上に何が起こるかわからない
非常に楽しみな大会になりました。
感想を1組ずつ綴っていきます。
ファーストステージ
1.モグライダー
初出場 マセキ芸能社
637点 8位
数年前にネタを見た時には、
ボケのともしげさんのポンコツキャラで
笑いをとっていた印象でしたが
今回は第一にネタがめちゃめちゃ面白い。
美川憲一に「さそり座の女」を
気持ちよく歌わせてあげたいという
奇抜な設定ですが、
ともしげさんのポンコツキャラが相まって
本気で言ってるのではないか
とまで思うくらい自然に入ってきました。
馬鹿なやつがなんか言ってて
それに付き合ってあげてる
と言う構図なのかなと。
そして、
モグライダーの面白さは
ともしげさんの危うさ
にあると感じました。
漫才なので台本があり
練習もしてるはずなのに、
ともしげさんが
演じている感じが全くなく
ギリギリなのが面白いです。
ボケの仕組みが一本通っており
言うなれば「枠」にともしげさんを入れて
漫才が進んでいった点も良かったです。
綱渡りのような危うさが
モグライダーの漫才の肝
なのではと感じました。
ツッコミの芝さんが
意図してやっているのでしょうか?
だとしたら
天才としか言いようがないですね。
天才と天性のキャラ、
初出場で2人のキャラクターと
実力を示したのではないでしょうか。
ステージのせり上がりの表情が
それを表しているのが印象的でした。
2.ランジャタイ
初出場 グレープカンパニー
628点 10位
マヂカルラブリー優勝で起きた漫才論争、
ランジャタイの決勝進出は
それを上回る論争があるのでは
と声が上がっていましたが、
実際はそんなことは杞憂に終わりました。
賛否がはっきり分かれるコンビ
だとは思いますが、
今大会で
ランジャタイの凄みを
証明できたのではと思いました。
それは国崎さんのずば抜けた表現力です。
数多いる漫才師の中でも
屈指のものではないかと思います。
まるでアニメを見ているように
シーンが目に浮かぶ情景描写、
声帯模写で本当に素晴らしいです。
ランジャタイの漫才は落語だ
と言われますが、
物語を演じ、伝える能力は
誰もが認めざるを得ないと思います。
志らくさんの点数が高かったのは
この点を評価したのではないでしょうか。
そして、
類い稀なる表現力で演じるストーリーが
猫が耳から体内に入り悪さをして
国崎さんが将棋ロボになるという流れで、
本当に意味がわからないが
何が起きているのかははっきり伝わる
ここがランジャタイの面白さであり
凄さだと思いました。
審査員が頭を抱えてても、
低い点数が連続しても、
どこを吹く風で笑いながら見てる国崎さん
巨人師匠の等身大パネルも最高でしたし、
結果は最下位でしたが
1番爪痕を残したのではないでしょうか。
伊藤さんもかなり変わっている方で
面白いのですが
今大会では
そこが出てなかったのが残念です。
3.ゆにばーす
3回目 吉本興業
638点 6位
ド直球のしゃべくり漫才で
勝負してきたのが痺れました。
それも磨きに磨き上げた素晴らしいネタ。
設定はシンプルですが
男女コンビの強みが活きるテーマで
中川家の礼ニさんも賞賛していました。
M-1で優勝したら芸人を辞めると
川瀬名人はかつて公言していましたが、
尖った部分がかなり丸くなった印象です。
面白い漫才をすればいいだけではなく
それをお客さんに
わかりやすく伝えることも
取り入れてると感じました。
本で読んでも面白い漫才だなと、
素晴らしいネタでした。
4.ハライチ (敗者復活枠)
4回目 吉本興業
636点 9位
ハライチといえば澤部さんへの
無茶振り漫才が代名詞となっていますが
いつものハライチらしくない漫才を
ラストイヤーに持ってきました。
M-1出場するというだけで話題になるほど
人気、地位を得ているコンビが
なんでM-1という実力を試される、
リスクを伴う大会に出るのか
と思っていましたが
今までのスタイル以外にも
こんなに面白い漫才があるのかと
知らなかったことが恥ずかしいです。
他の漫才も見てみたい
という方も多いのではないでしょうか。
単独ライブを見てみたいと思いました。
漫才への情熱は絶やしていないという思いが伝わりました。
上沼さんが感動していたのも納得です。
5.真空ジェシカ
初出場 プロダクション人力舎
638点 6位
大喜利漫才の最先端ではないでしょうか。
個人的には笑い飯さんと
ボケのスタイルが重なりました。
「注釈付き笑い飯」という印象です。
今までないような出所からのボケで
1つ1つのクオリティが
非常に高いと思いました。
特に最初の「罪人(つみんちゅ)」の流れは
単発でも面白いボケが
見事に組み合わさっており
本当に素晴らしかったです。
ただ、
ツッコミのガクさんだけ役に入ることなく
ガクさんのままネタが進んでいくので
2人の掛け合いが弱かったと感じました。
「もっと笑いたかった」と
上沼さんが言っていましたが
ボケ一発で伝わらないところも
多かったのかなと思います。
それを補足しなければいけないところが
勿体無いとも思ってしまいました。
ボケのクオリティで言えば
今大会1番だと思います。
これからが本当に楽しみなコンビです。
6.オズワルド
3回目 吉本興業
665点 1位
今大会本命と言われ
3年連続決勝進出ということもあり
手の内はある程度バレている中
素晴らしい漫才をやってのけました。
ボケをボケに見せない畠中さんの演技力も素晴らしいですが
伊藤さんの緩急の塩梅が絶妙なツッコミが特に素晴らしい。
引きのツッコミも前に出るツッコミもあり
こちらが思う一歩先のワードのツッコミが
更に大きな笑いを生み出していてました。
オズワルドは東京漫才の新しいスタイルを生み出したと思います。
初出場の時から独自のスタイルで
異彩を放ってましたが
今大会で完成させたと言っても
過言ではないかと思います。
本人も「もう何も残ってない、
全てこの大会で出し尽くした」
と語っており
今のスタイルを更に進化させるのか
違うスタイルを生み出すのか
今後のオズワルドには目が離せません。
7.ロングコートダディ
初出場 吉本興業
649点 4位
舞台の上下で場面を演じ分けるスタイルは
コント師ならではの漫才でした。
ワニに生まれ変わりたいという設定で
スタイリッシュな漫才の形で
ふざけてる漫才をしていた点
が良かったです。
ワニになれずに肉うどんになってしまい
肉うどんを演じるところも
本当に内容だけ見ると
馬鹿馬鹿しい漫才をしてますね。
ネタが面白いのはもちろんですが
兎さんのキャラが
抜群にいい味を出してました。
びっくりする時の顔は
唯一無二の面白さがあると思います。
兎さんの時だけお前と呼ばれるところは
特に面白いなと思っていましたが
ちょうどいいタイミングで回収されて笑ってしまいました。
ここぞのボケが全部馬鹿馬鹿しく
ちょうどいいバランスでネタに組み込まれてと思います。
8.錦鯉
2回目 ソニー・ミュージックアーティスツ
655点 2位
前半2分くらいまで
このまま終わったら厳しいかな
と思っていましたが後半大爆発しました。
それも前半のフリを回収したとかではなく
シンプルに雅紀さんの力技で
大爆発を起こしてました。
ツッコミが聞こえないくらい
勢いが凄すぎて
ボケの応酬だけでどんどん笑いを取っていました。
物凄い熱量のボケで
笑いのツボをこじ開けられた印象です。
錦鯉の漫才は
錦鯉しか面白くできないと思います。
雅紀さんの人生が詰まっている
ので重みが違います。
この漫才を見て
何も考えずに笑える漫才が1番
なんだなと思いました。
9.インディアンス
3回目 吉本興業
655点 2位
漫才のテクニックがずば抜けてました。
塙さんも「全組で一番漫才が上手い」
と言っていましたが
あのテンポでの掛け合いで
完璧にやり遂げてました。
ボケ数の多い漫才では
キングコングさんやNON STYLEさんが思い浮かびますが
インディアンスさんは
このスタイルの漫才の極みに達した
と思います。
ボケ数が多い漫才は
同じところでいっぱいボケたり
ボケやすい枠を設定して
いろんなパターンでボケる
というのがよくある形です。
インディアンスは
場面の展開をどんどんしていきながら、
前のボケからのつながりもあり、
見終わった後に残る
キラーフレーズもしっかりあり、
時には長くボケて緩急をつけたり、
高速漫才を乗りこなしてる
という印象で素晴らしかったです。
練習量、踏んだ場数が物凄い
と感じられました。
10.もも
初出場 吉本興業
645点 5位
ダブルボケならぬ
ダブルツッコミというスタイル。
「〜顔やろ」というツッコミは
どの漫才師も
一度はしたことがあるくらいの
ベタなボケツッコミですが
それを延々やり続けることで
独自の漫才に昇華させた点
が素晴らしいです。
また、
ももの漫才は語感がいい言葉が面白い
と思いました。
「ダンスダンスレボリューション顔やろ」
「三つ折りマジックテープ顔やろ」など
口出して気持ちいいツッコミの方が
ウケてたと感じました。
「そんなん言うたらあかん顔やろ」
で外してきたところが
不意をつかれてめっちゃ笑いました。
まだ4年目で
まだまだこれからが楽しみなコンビです。
ファイナルステージ
1.インディアンス
無駄があるようで無駄がない漫才で
変な感じの間でボケたなと思ったら
それが次のボケにつながっている。
漫才の技術が相当高いレベルにまで
到達してると思います。
アドリブを入れてるのか、ネタなのか
わからないくらい
高度な技術でアドリブ風のボケ
をするのが上手いと思いました。
去年のM-1で
敗者復活から上がってきた時、
同じネタを
1日に2回見る機会がありましたが
アドリブと思ってたボケを
2回ともやってたので
これはアドリブに見せた
練られたボケなんだなと
初めて気付けました。
実際は本当にアドリブの部分も
あったのかもしれません。
ボケ数の多いスタイルは人によって
好みは分かれますが
デビューから一貫してこのスタイルなので
更に進化したインディアンスを
期待しています。
2.錦鯉 優勝
2本目は
渡辺さんのツッコミが光ってました。
「猿が森に逃げた」の後の
「じゃあいいじゃねえか」の
ツッコミの間が完璧でした。
審査員も唸っているのが印象的でした。
これまでの錦鯉の漫才を見て
伏線回収された事に意表突かれました。
1本目の前半で
「穴掘っとけよ」
「穴は掘らないよ」
と言う件が妙に浮いているなと感じて、
後半繋がるのかと思ったら
そのまま回収されずに終わったので、
あれはなんだったのかと
逆に1番印象に残っていました。
2本目の渡辺さんが
お爺さんの寝かし方を説明する件も
異様に浮いてましたが
これも伏線ではないのかなと思っていたら
オチでしっかり回収されて
意表を突かれましたし、
審査員、お客さん含めて「すごいぞ錦鯉!」
という空気になっていたと感じました。
そして脈絡のない
「ライフイズビューティフル」で落とす。
終わってから振り返れば
今大会を一言で表す言葉です。
この時点で錦鯉の優勝は
決まっていたかもしれません。
3.オズワルド
1本目終了時点ではオズワルドが圧倒的でしたが
空気を錦鯉にガラッと変えられてました。
錦鯉のわかりやすいネタの後には
少し難解すぎたのかなと思いました。
畠中さんがクレイジーすぎました。
裏切りの裏切りの裏切りの…
というように
見ている側の頭がこんがらがる漫才。
噛んだ所があったり、
説明が難しすぎたり
話の筋に追いつけなかった
というのが正直な所です。
まとめ
最後の雅紀さんの涙にグッときました。
審査員の塙さん、富澤さんまで泣いていて
私も泣いてしましました。
本来は10年で芽が出ない芸人に
辞めるきっかけを与えるという
目的もあったM-1グランプリですが
50歳の最年長優勝者が誕生しました。
夢を諦めない、
いつでも夢を持っていいという
本来の意図とは真逆のメッセージを送る
大会になったのではないでしょうか。
本当にライフイズビューティフル
暗い時代を明るく照らしてくれたのではないかと思います。
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