ウィスキーのラベルに
12年と書いているものは、
12年樽熟成させたウィスキーだと
思っていませんか?
実はこれは違うんです。
例で挙げた12年というのは
最低熟成年数のことであり、
12年熟成のウィスキーには
15年、18年、30年熟成のウィスキーも
使われているかも知れません。
もちろん主に使われるのは
表示されている熟成年数の物なのですが、
実際には様々な熟成年数の
ウィスキーをブレンドして
そのウィスキーの味を作っているんです。
ウィスキーの味の70%は
樽熟成で決まるとも言われています。
それほど樽熟成はウィスキーの風味に
とても大きな影響を与えます。
そもそも出来立てのウィスキーは
無色透明で香りもあまりありません。
ニューメイクと
名前がついているウィスキーは、
この出来立てのウィスキー
のことを指します。
味は荒々しく角が立っていて、
加水しないと飲みにくいと
感じる方が多いと思います。
樽熟成して初めて、
みなさんが思い浮かべる
ウィスキーが完成します。
ウィスキーは蒸留された後、
どのように熟成されるかで
様々な風味に化けるお酒です。
ウィスキーのラベルや説明文を見て
よくわからない単語があって
どういう味わいなのかわからない
という事もあるかと思います。
それが少しでも解消されればと思い、
以下で説明していきます。

樽熟成に影響を与える要素
- 熟成年数
- 樽の木材
- 樽の大きさ
- 詰められていたお酒の種類
- 熟成方法
1.熟成年数
ウィスキーは熟成に伴い
アルコールの角が取れていき、
ウィスキーが苦手な人が嫌う
アルコール感は少なくなっていきます。
樽熟成中はウィスキーと樽の成分が
化学反応を起こしており、
段階的に様々な反応を起こしていきます。
数十年熟成させないと
反応しない成分もあり、
どのタイミングで熟成を止めるかで
様々な表情を見せます。
短期熟成、長期熟成
それぞれに良さがあります。
短期熟成は
ソーダ割りにしても
バランスが崩れず美味しいです。
氷を入れたり、加水をすることで
香りを開かせながら飲む楽しみ方
もあります。
長期熟成は
まず驚くほど香り、味が強いです。
短期熟成では得られない
複雑で奥行きのある香りを楽しめます。
基本的に氷を入れて冷やしたり
加水をしすぎるのは良くないです。
好みは十人十色なので
一概にこれが美味しい
とは言えないものです。
実際に飲んでみて
好みのウィスキーを見つける楽しみ
がウィスキーにはあります。
2.樽の木材
樽は木材の種類によって
ウィスキーに与える影響は様々です。
燻製をする時に、
スモークチップの木の種類で
風味が変わるのと同じように、
ウィスキーも樽の木材によって
風味が異なります。
以下に主な木材の種類をまとめました。
木材の種類 | 特徴 |
アメリカンオーク | バニラのような甘い香り |
フレンチオーク | タンニンを多く含む、スパイスの香り |
スパニッシュオーク | タンニン、ポリフェノールを多く含む、甘くて重みのある香り |
ジャパニーズオーク(ミズナラ) | 白檀、伽羅のような香り |
3.樽の大きさ
樽の大きさによっても
ウィスキーの香味に影響を与えます。
樽が小さいほど
樽の成分が多くウィスキーに移り
大きいほど少なくなります。
以下に主な樽の種類をまとめました。
樽の種類 | 容量 |
ファーキン | 40L |
バーレル | 180L |
ホグスヘッド | 250L |
バット | 480L-520L |
4.詰められていたお酒の種類
樽は1回で使い捨てるのではなく
繰り返し使われます。
ウィスキーを詰めていた樽に限らず
他の種類のお酒を詰めていた樽で
ウィスキーを熟成させることも多いです。
樽に染み込んだお酒の成分が
ウィスキーの風味に
大きな影響を与えます。
初めてウィスキーを詰める樽
(他のお酒を詰められていた樽)を
ファーストフィルと言い、
樽の香味成分が一番強く出ます。
再度ウィスキーを詰められた樽は
リフィルと呼ばれ
使えば使うほど香味成分は薄れていきます。
ここからウィスキーの樽熟成に使われる樽に詰められる主なお酒の特徴を説明していきます。
バーボン
バーボンはアメリカで造られる
とうもろこしが
主な原料のウィスキーです。
新樽で熟成させるという決まりがある為、
使い終わった樽を
他の国でウィスキーの熟成に
使われることが多いです。
また、チャーリングという
樽の内側を強火で焦がして
炭化させる工程が必要です。
炭化した樽は
スムースな味わいを生み出します。
バーボン樽は
バニラの香味、軽い甘味が特徴です。
シェリー
スペインの酒精強化ワイン、
3大酒精強化ワインの1つです。
酒精強化ワインとは
ワインにブランデーを加えたものです。
白ぶどうのみ醸造に使われます。
シェリー樽は
ウィスキーの熟成に使われることが多く
シェリー樽の熟成に
こだわっている蒸留所も多くあります。
(マッカラン蒸留所が有名です)
シェリー樽は
甘い芳醇な香りが特徴です。
シェリー酒の中にもいくつか種類があるのでまとめます。
シェリー酒の種類 | 特徴 |
フィノ | 軽い口当たりで辛口、アーモンドのような香り、淡い琥珀色 |
オロロソ | 酸味があり力強い味わい、ナッツのような複雑な香り、琥珀色から褐色の濃い色合い |
モスカテル | 爽やかな甘味、フルーツの香り、琥珀色から褐色の濃い色合い |
ペドロ・ヒメネス | 濃厚な甘味、ドライフルーツやコーヒー、チョレートのような香り |
マンサニージャ | 軽くてキレのある辛口、塩の風味 |
マディラ
ポルトガルの酒精強化ワイン
3大酒精強化ワインの1つです。
白ぶどう、黒ぶどうが使われます。
加熱熟成が特徴で適度な酸味が生まれます。
甘さによって
辛口のセコ、中辛口のメイオ・セコ
甘口のドセ、中甘口のメイオ・ドセ
の4種類に分類されます。
マディラ樽は
シトラスやドライフルーツのような香りと
奥深い甘味が特徴です。
ポートワイン
ポルトガルの酒精強化ワイン
3大酒精強化ワインの1つです。
日本でもポートワインを模した
赤玉ワインが有名なので
馴染み深いのではないでしょうか。
大きく2種類に分けられ、
短期間樽熟成で甘口のタイプの
赤ワインがルビーポート、
白ワインがホワイトポート、
長期間樽熟成で酸化熟成させた
トゥニータイプです。
ポート樽は
ベリー系の香味が特徴です。
マルサラワイン
イタリアの酒精強化ワイン
上で挙げた3大酒精強化ワインに
マルサラワインを加えて
4大酒精強化ワインと呼ばれます。
ティラミスに使用されることで有名です。
白ワインがほとんどですが
赤ワインもあります。
カラメルの香り、樽由来の木の芳醇な香り
を楽しめるワインです。
マルサラ樽は
華やかなフルーツの香味が特徴です。
ワイン
上記の4大酒精強化ワイン以外のワインは
大まかにワイン樽に分類されます。
中でもよくウィスキーの熟成に使われるのが
バローロ樽とソーテルヌ樽です。
バローロはイタリアのピエモンテ
で造られる赤ワインです。
黒ぶどうのネッビオーロ
という品種を使用し、
長期熟成に耐えれる
重厚なワインが出来上がります。
バローロは最低3年、
その内木樽で2年熟成させる
ことが決められています。
バローロ樽は
タンニンと土っぽさが特徴です。
ソーテルヌはフランスのボルドー
で造られる極甘口の白ワインです。
貴腐ワインと呼ばれ、
貴腐菌というカビの1種が
ブドウにつくことで水分が抜け
エキスが凝縮されたブドウが生まれます。
そのため普通のブドウよりも
糖度がかなり多く残り、
極めて甘口なワインが出来上がります。
ソーテルヌ樽は
はちみつのような甘さと
柑橘の香りが特徴です。
ラム
西インド諸島原産の
サトウキビを原料とした蒸留酒。
短期熟成のホワイトラム
3年以上樽熟成させたダークラム
中間にあたるゴールドラムがあります。
カラメルのような芳醇な甘い香り
が特徴的なお酒です。
ラム樽は
焦げたカラメルのような風味が特徴です。
カルヴァドス
フランス、ノルマンディー地方で造られる
りんごを原料としたブランデーです。
カルヴァドス樽は
爽やかなフルーツの香味が特徴です。
ビール
ビールは樽熟成させないことが
ほとんどですが、
樽にビールを染み込ませる為に
一定期間樽熟成し、
(これをシーズニングと言います)
その樽でウィスキーを熟成に使用する
ことがあります。
IPA樽とスタウト樽が有名です。
IPAは
インディアンペールエール(India Pale Ale)
と呼ばれるビールの1種で、
大航海時代に
イギリスからインドへビールを輸送する際
防腐作用のあるホップを
大量に使用したのが始まりです。
ホップ由来の苦味と鮮烈な香りが特徴です。
IPA樽は
柑橘の香りが特徴です。
スタウトはイギリスで生まれた
黒ビールの1種です。
原料の大麦を焙煎することで
色の濃い、カラメルのような
芳ばしい風味を持った
ビールが出来上がります。
スタウト樽は
カカオやカラメルのようなビターな風味が特徴です。
5.熟成方法
樽熟成後に別の種類の樽に移し替えて
短期間熟成させ異なる風味をつけることを
カスクフィニッシュと言います。
別々の樽で熟成したウィスキーを
混ぜ合わせることをマリッジと言います。
ここまで説明してきた樽熟成を
更に掛け合わせる熟成方法です。
もちろん原料、蒸留器、作り手によっても
出来上がるウィスキーには
様々な特徴があります。
また、場所や風土にも大きな影響を受け
同じ貯蔵庫の隣同士の樽でも
違う仕上がりになることもあります。
この謎は科学的に証明されておらず
樽熟成をしたウィスキーには
1000種類以上の化学物質が
含まれることまでは判明しておりますが、
それが味、香りに
どのように影響を与えているかは
未だに解明できていません。
神のみぞ知る樽熟成の神秘です。
最後に
ここまで説明したように
ウィスキーの味を大きく決定づける
樽熟成には多くの要素があります。
更に、それらを組み合わせることで
一生では飲みきれないくらいの
ウィスキーがこの世に存在し、
今現在も新しいウィスキーが
続々とリリースされています。
広大で奥深いウィスキーの世界
是非みなさんも
足を踏み入れてはいかがでしょうか?
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